バンチョーが教えてくれたこと

俺は「一人っ子だから」ってメジャーな理由で、

バンチョーって名前の犬を飼ってもらったけど、

色んなことをバンチョーから教えてもらった

 

まず犬の口は臭い

バンチョーが毎朝、俺の顔をなめ回すから、

俺はちゃんと顔を洗うようになった

 

次に犬はアホだ

バンチョーには鬼教官のように躾たけど、

子犬の頃は俺の部屋の前に

ビッグなトイレのプレゼントをやめなかった。

物理的な手の汚れなんて洗えばイイって、

軽く覚悟することができた。

それに俺は掃除を覚えたよ。

 

そして、犬は全てを破壊する

どこの反社会的カリスマをリスペクトしているか知らないが、

靴までビリビリに引き裂かきやがる。

電話線をちぎっていた時には、ママも怒りで震えていた。

俺は物を大切にするようになったし、片付けるようになった。

 

犬は言葉が分かる

ママが家で俺に怒っている言葉を発した時は、

俺が家に帰る頃になると、バンチョーは窓のとこから顔を出して

俺に警報を出してくれた。

小さい頃は良く話し相手にもなってくれて、

バンチョーは話さないけど会話は成立してたな。

俺は他人を信頼するってことを覚えたよ。

 

犬は人の心が読める

これは本当だ、人間でも出来ないのに。

オヤジが傷ついている時や、俺がいつものようにフラれた時は、

バンチョーは何も言わずに悲しそうな顔をして、

寄り添っていてくれた。

「もう泣くな」ってなめてくれたけど、

俺と同じくらい俺の涙の味を知っているはずだ。

お前はいつも慰めてくれたな、悪いなバンチョー。

 

犬は老いる

あんなに元気の塊だった毛むくじゃらも、

はしゃがなくなって、目が悪くなり耳も遠くなる。

だから、近くに寄って話しかけたり、

驚かさないように気を使うってことを覚えた。

俺は、じいさんや婆さんにも、気を使うようになれたよ。

 

犬は死ぬ。これも本当だ。

命の大切さを学ぶとか高尚なこと言うけど、

そんなんじゃなく悲しいんだよバンチョー、

大切な友達がいないんだ。

 

お前のことを忘れたくはないけど、思えば思うほど辛くなる。

 

受け入れるとか、乗り越えるとか、

アニマルセラピーの先生がアニマルを失った俺に色々言うけど、

そんなことしてもお前は戻らないじゃん?

 

まあ、お前は友達がすぐに出来る奴だから、

そっちの世界でもう友達を作ってて寂しくはないだろう。

俺もお前を通して出来た友達もいるし、

ずっとお前のベスフレだから、

お前が恥ずかしくないように前に進むことにするよ

 

うちも「一人っ子だから」って、

今ではマイナーな理由でダンチョーという犬を飼ってる。

 

ダンチョー、今度はうちの子に色んなことを教えてくれ。

また俺に教えてくれてもいい、友達として