三年目のアイスティー
最後に出してくれたアイスティーに、
ベイビー、あんたが付けたシュガーと
ありがとうとサヨナラを使わなかったから、
あの時残したアイスティーが今でもどこかに引っ掛かってる。
どっかの世界線じゃあ今でも二人が一緒にいて、
アイスティーに何にも混ぜなくても満足してんだろうな。
あんたが居なくなってどこにあるかも分からなかったし、
あれから事故物件みたいに忌み嫌って、
何年も避けていたアイスティー。
あんなに毎日飲んでいたのに、薄情なのか厚情なのか、
アイスティーともお別れしたんだ。
新しい出会いや浮かれ騒ぐようなパーティーに馴染んで、
あんたのことも何にも考えなくなった頃、
いい冗談か悪い冗談か分からないけど、
二人のアイスティーが当たり前に棚から出てきやがった。
ベイビー、俺は未練がましい野郎だけど、
今じゃあんたの幸せを祈っているし、
二人がサヨナラしたのは正解でも不正解でもないけど、
悪いことじゃなかったって、受け入れてもいるから、
これを最後にってアイスティーを作ったんだ。
あぁ、あんたはこんな風に、
今、目の前に見ている悲しい過去と、
今は見えていない明るい未来を考え、
アイスティーの波紋に浮かぶ楽しかった思い出を噛み締めては、
一口ずつちゃんと飲み干したんだ。
あぁ、そうか。
あの日のアイスティーはこんな味がしたんだな。