LOVEマシーンになった男

 

「良く見とけよ。女の落とし方を教えてやるから」

って不敵に微笑んで歩き出し、そのまま目標の女を通り過ぎて、

郵便ポストに手を突っ込んで去って行った背中に、

マニフェストの大切さと人を無闇に信じてはいけないという、

宗教画的な救世観を体現した幼なじみの兄ちゃんは、

今でもメシア的存在だ。

 

そして、いつだって前向きでしみったれで品がないから、

気兼ねなく一緒に過ごせる素晴らしい男の外の男だ。

 

兄ちゃんは女性経験がないけど、

初体験に臨む俺には、ちゃんと本で勉強した知識で親身に、

時に厳しく指導してくれた。

 

兄ちゃんが高校生の時にいたという幼なじみの彼女は、

幼なじみの俺には紹介してくれなかったけど、

この世界を等身大に評価して、ちゃんとクソッタレって言えるナイスガイだ。

 

そんなメシアは毎週末、正装にサングラスをかけ、

ホラー映画で最初に死ぬモブらしい格好でクラブに行き、

自分が気に入った女の子を眺め舐め回している。

 

可愛い女の子から片思いされた学園物語、

異世界で何人もの可愛い子ちゃんと出会い求愛されるハーレム物語、

同窓会で久しぶりに会った同級生と始まる胸キュンキュン物語などの、

詳細なパターンの妄想で翼を広げ、

ドリンク一杯だけで、あったらいいなって未来に飛んでいく。

 

何かしらの頭の病気だとは思うけど、

その妄想をクソキモい妄想ブログに書いてくれているから、

それを熟読している俺は、

街で出会う傷だらけの天使達を励ます時に、必ず勧めている。

 

そして、なぜかそのクラブに出入りしている、

傷を負わせる側の天使どもがクソブログを知っていて、

そいつらに兄ちゃんは「LOVEマシーン」って呼ばれて、

サタン並みに恐れられてる。

 

兄ちゃんの恐ろしいパワーはサタンにもメシアにもなれるけど、

愛を生み出すんならどちらも似たようなもんだろう。

 

今日も兄ちゃんは、

お気に入りの「モーニング息子」ってプリントTシャツを着て、

自分の未来を「ウォウウォウ」励ましている。