王様の耳はパンの耳

 

アラブ諸国アメリカと手を握って、

水平線に溶けてしまいそうな暑い年だった。

 

俺はお母さんから魔法のクレジットカードを取り上げられたから、

遊ぶ金欲しさに安易に働こうとしたんだ。

 

今なら思い止まれるけど、

あの頃の俺は働けば何とかなると思ってる、労働信奉者だった。

 

それで、面接会場に行ったら、

オジサンが自分を物に例えたら何ですか?って言ったんだ。

 

物ボケかな?って思ったけど、

トップバッターの人は自分を潤滑油に例えた。

みんなや回りの摩擦を少なくして社会も回すらしいけど、

説明が噛み噛みだった。

 

次の人は、パンの耳って言ったんだ。

中の美味しい部分を守って嫌われることもあるけど、

噛み応えがあって味がありますって。

食べ物だけに上手いって思ったね。

 

それで、俺はもちろん魔法のクレジットカードって答えたんだ。

小銭を持ち歩く必要がないし、財布だって要らない、

便利で信頼できる新しい社会のシステムだって。

カードだけにいい手で攻めたと思ったね。

 

だけど、そこは革工場でメインはお財布用だったんだ。

 

あのオジサンには、俺が革工場に新しい時代の風を巻き起こす、

ジギー・スターダストに見えただろうなあ。

 

結果?

潤滑油は今じゃ工場の人間関係を滑らせ過ぎてギスギスさせていて、

パンの耳は警備会社で社会を守っているらしいよ。