幸せだった時間

他人への愛想笑いと誤魔化すための壁作りという、クソみたいみたいな1日を何とかやり過ごして、やっと、やっと帰って来る毎日。

そこには、いつ見ても色が90年代チックに煤けている、カウントダウンTVチックでチープなドアがある。

 

そいつを苛立ちのナイフで刺してネジルみたいに鍵を開け、乾いたフローリングの砂漠に足を取られながら倒れ込んだ、何年物の不満と食べかすが染み付いた、二人のソファー

 

毎週末に体を寄せ合って映画を見たり、日々のゴールデンタイムをそこで過ごした

 

冬には二人でマグ持って温まったし、雷のようなケンカもしたし、名曲のように愛も確かめ合った、色んな染みが付いていたあのソファー

 

二人の終わりと共に無くなった、あのソファー

 

ああ、食器を洗う生活音や、町の喧騒の中で、今さら、もう一度あのソファーで寝っ転がって寛ぎたい。

 

あの染みだらけのソファーは、どこで買ったんだっけ?

あれから、さんざん探したけど、もうどこにも売ってない

 

もう二度と一緒に、あのソファーで映画なんて見ることが無いって分かってるから、

こうやって感傷に浸るんだろうけど、それならこの涙に意味なんてないんだ

 

だから、もし。

ベイビー、今、泣いていても、その涙に意味なんてないんだ。

ただの感傷に浸るオルゴールだよ

 

だから、もう、俺もあんたも幸せになっていいんだ

 

そして、誰かとソファーにもたれて木漏れ日を浴びる、

幸せな時間を繋いで、思い出に変えることだって出来るのに。

そんなことだって出来るのに。

 

ああ、そうか。

俺が探していたのはソファーじゃなくて、幸せだった時間なんだな。