10万分の1

薄暗いステージで、誰かが出てくることを約束しているマイクスタンドが静寂を歌い、ライトが空気まで焦がして匂ってくるあの独特な空間

 

そこにやっと出てきた微笑みは、今から歌う時間に向けられていて、

タイトなドレスの光は幾つもの視線に、始まりのリズムを贈っている

 

懐かしい、不意に思い出す。

特に皆と騒いだ夜の後は、君のことを思い出す。

 

タバコの煙と一緒にくゆるような歌声が、

今でもライターの向こうに見える気がする

 

いつかリンジーやマッコイみたいなスターになって、

でかいホールに立って、そこで俺だけに向けて、

小さい頃に歌ったお菓子のコマーシャルソングを熱唱してくれる。

って約束を覚えているかいベイビー?

 

チャンスをものにするんだって、急にいなくなって、

有名になって、知ってるはずの歌声がラジオから

知らない人の声みたいに聞こえるようになった

 

ラジオから聞こえてくる君の歌声を

「蛙の合唱以下のクソッタレ」って、

いつまでも言っていたかったのに、

駆け抜けるようにこの世界からはいなくなった

 

リンジーやマッコイと同じスターになったから、

そっちでも大物たちと一緒に歌ってんのかい?

それがいいのか、悪いのか、どっちでもいいけど、

俺にはよく分からないよベイビー

 

楽しそうな君が好きだったのか、

俺の側にいてくれる君が好きだったのか、

今じゃあ何にも分からないんだ

 

ただ、俺は、別にでかいホールじゃなくても、

君が俺に歌ってくれるなら。

何だって良かった

 

あぁ、君を世界で一番評価したのは俺だし、誰より憎んでいるのも俺なんだぜ?