ギュウってして
誰しもが映画の主人公になりそうな、霧雨に煙る午後の街中で、
女が一人泣いている
もう、幼くはない女の涙が、まだ少年らしさが残る男の情に訴える
頬を濡らす涙は霧雨のように街に消えることはなく、
女は涙を滴らせるに任せて言う
「牛丼メガ盛りが食べたい」と
あぁ、ベイビー、俺より食べるのはいい
どんなに食べたっていい
食べたいものを食べたいときに食べたいだけ食べるのがいい人生だ
野生の世界じゃオスよりメスが大きいのが当たり前で、
その分食べなきゃ子孫繁栄にだって影響するだろう
ただ、俺より幅だけが大きくなっていることはアウトだ。
必ずご飯は一番上のサイズを注文するのもツーアウトだ。
何よりもう、ぽっちゃりとかマシュマロボディーじゃないとこがスリーアウトだ。
チェンジしたくて、ゲームセットを探してるのに、
早い旨い安いって感じのあんたに、いつも箸を向けちまう
あといちばん腹が立つのは、ここは牛丼屋なんだから、
「ブヒブヒ」泣くなんてナンセンスだ
ここは「モー」て泣くとこだろ?
そんなんだから、お守りのブレスレットが
食欲を封印している数珠みたいにはち切れそうになるんだよ
あぁ、でも、牛丼屋で
「悲しいからギュウってして」
だなんて、そういうとこにモーってなる