紐怪談
君がそう言うんなら、そうなんだろう。
「やった」と言えば、やったんだし、
「終わった」と言えば、終わっている。
「そこに在った」と言えば、在ったんだ
愛情たっぷり中は真っ赤っ赤なハンバーグが、
焼けていると言われたら、それは焼けていて食べ頃なんだ。
この程度で腹痛なんて、正に片腹痛い。
洗濯当番は終わっていると言われたら、終わっているんだ。
洗濯物は入れたときと同じ状態のままで、乾燥機もないのに乾いたんだ。
君を疑うこの俺の心も洗って、涙も脱水したいほどだ。
ワイヤレスイヤホンを無くさないために付けているその紐は、
決して「コード付きの奴で音楽聞いたらいいじゃん」
なんて答えにはならないし、
そんな提案に耳を貸すこともないだろう。
そのコードが無くなるなんて、
紛失対策を紛失するなんて、
そんなことあるわけない。
けど、朝から洗面所で
くしゃくしゃになっている紐みたいなやつを見かけているが、
君が会社に置いているって言うんだから、
あれはただの紐なんだろう。
きっとあれは紐の生き霊か、
ひも理論みたいな俺には難解な超常現象だ。
あぁ、しかし。
俺にはその紐がやっぱり見えていて、
恐ろしいことに紐にしか見えないんだ。
そして、帰って来た君の耳からは、
100均で買ったような、いつもと違う色の紐がぶらさがっていて、
やっぱり「紐なんて失くしてない!」ってなぜかちょっと怒っている。
あぁ、私が朝から何回も見ていた紐のようなもの。
あれは一体、なんだったのでしょうか?