「夜明け前にこぼれたコーヒー」  

 

長い夜がもうすぐ明けようとしている

何度、その愛してやまない顔を近づけ、熱く語らい、

夜を超えただろう

 

二人で買ったカーテンが謝るように薄闇に映えている

今さら問い詰めるつもりなんてない、

争うくらいなら馴染み深いその声をもう少し聞いていたい、

これからはもう聞けなくなるのだから

 

淹れたばかりの冷めない感情でいられたらどんなに良かっただろう

 

譲れぬ好意ばかりを主張し、分かり合おうと苦しい衝突を繰り返して、

互いの旨味も苦味も知っていた

良いときも悪いときも思い出をわけあい、深く味わいのある日々を重ねた

 

しかし深まるほどに好意は冷めていき、

然り気無い優しさを溢れないように注いでは気づくことはなく、

湯気のように漂う不信のベールに向こう側が見えなくなった

 

誰が悪いのでもなく、いつからか優しさの味を忘れ、

思い遣りに深い日々が窮屈になり抜けだそうとしていた、

どちらからでもなく、ただ【終わり】が訪れた、

 

だから誰が悪いのでもない

 

最後の休息を共にして、

もしかしたらまたあの日々に戻れるかと少しは期待はしていたけど、

夜明け前にこぼれたコーヒーは、もう元には戻らない

 

だから、もう困らせることもない

 

そして長かった夢が覚め、別々の夜が明ける