2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

「代価」

心の真価ともいうべき宝石のように透明に輝いている熱意が、 もう、呆けたように限り無い深淵を眺めている 絡み付いては広がっていく乾いた砂浜で、 自分と同じ顔をした虚無ですら今となっては敵か味方か分かる術は無いのだ 大切な記憶の曲がり道や、やむを…

「底なし沼に飽きている」

怠惰な煙でむせ返る無価値な部屋で、 生活の泥沼に顔面崩壊を起こしながら頬杖をついている 不眠症の苛立ちを磨り潰したコーヒーを飲むと、 胃の中で青ざめていた自尊心のカエルが周囲からの圧力に潰されて、 全てを知らない世界を笑いながら沈んでいく、 そ…

「クラブ スズメバチ」

ストリッパーと喧騒の夜を混ぜ込んだ劇薬を一気に飲み干せば 営業開始の罵声が響く 泥のようにまとわり付く音楽は直接カラダで聞くもので、 ここに入った時から耳は職務を放棄したようだ 注文は指先で数字を伝えると、 下水よりはマシといった飲んで酔えるも…

「美しいマリア像 顔面凶器」

あぁ何と豊満な肉体を開き、上目使いで「愛をカラダで証明」することの 尊さを説く土偶のようなマリア様 かぶりついて奪おうとする耳に心地良いはずの歌が、 細くしなやかな指でその吐息の口元を包み込まれ恥辱の聖歌が 聞こえない 肉付きの良い太ももに気を…

「都市の充足」

絶妙な距離感を持った木漏れ日が部屋を染め、 ゆらゆらしているカーテンが心に強烈な淡い刻印を彫り込んでいく 痛い、もう、とうに忘れたのに、痛い 幻想なのに見覚えのある影は? 聞いたことがないのに答えそうになる声は? 触れてもいないのに包まれるよう…

「千年舞台」

もうすぐ幕が上がる、 じっとして待ち続けている膝が ストライプの光をばらまきながら捩れて歌う よほど飽きているのか観客はもう息をしていない 忌の際のずっと以前から始まった陽気な歌に合わせて、 死ぬためか生きるために有ったか分からない彼ら彼女らの…

「雪を見るためだけに生まれた獣」

情念、柔肌、掘りごたつ、その手にしたものは何だった? 捨てたはずの情念の先端に、厳しい冷気が生への執着を運んでくる その手際の良さには美しさすら覚える しっとりとした雪のような柔肌に、その皮下に、 熱を孕んだ柔肌に付けられた獣の足跡を見た真夜…