わずかな誓い

 

ベイビー、ハッキリ言って俺は、あんたのオヤジが嫌いじゃない。

 

ハゲてデブでオヤジギャグが酷くても、

この街一番のシンデレラを必死に育てた男だと思えば、

ハゲ頭も苦労が滲む俳優の渋みになり、

突き出たお腹もフェラーリのフォルムに変わる。

 

何より何十年も娘ファーストでやって来たハゲ頭なんだから、

君への愛情に抜けはなく、思い遣りも一流だ。

そりゃあ、どこ産の何用か分からない、

俺のようなノーブランドには、いい顔はしないだろう。

 

俺の頭はフサフサで腹もツルペタだから、

他種族に娘を取られる族長のように、

コンプラにバリバリ引っ掛かる掟さえあれば、

一思いに俺の息の根っこを引き抜くだろうね。

 

そこをグッと堪えて、

こんな社会すら向き合ってくれないない俺に、

ちゃんと目を見て握手してくれるんだから、

俺はオヤジさんを尊敬すらしている。

 

なのに、ベイビー。

あんたはたまにそんなオヤジさんの

ハゲ頭とビール腹にいい顔しないけど、

俺もああなる可能性があるんだよ?

 

なんたってハゲデブの娘と末永くはにかもうとしてるんだから、

脱毛と肥満の出世街道にどっぷり乗っちゃってる。

 

でも、オヤジさんは小腹が減っても、

あんたのプリンには手を出さない分別のあるデブだし、

ハゲ頭を似合わない帽子で隠さない自己肯定感の高いハゲだ。

 

まあ、いつか俺もハゲデブになるかもしれないけど、

とりあえず絶対にならないって、

オヤジさんの残り少ない毛根とベルトの穴に誓うよ。