2020-12-01から1ヶ月間の記事一覧

「彼方で朽ちた暑い夏」

ロードショーを見ていたんだ、 お互い別々の道を選んだけどハッピーエンドの 桜並木の霞んだ花びらのカーテンの中でも君は輝いていた、 君に声をかける頃にはもう思いが膨らんで伝えたい気持ちは育ちすぎていた その笑顔の意味が分からずに正に天まで昇る気…

侵食  

ひと気が絶えて久しい部屋に自分の呼吸だけが響く、 だが1人、ねじくれた想像力の影から顔を覗けて、 極彩色の鎧を纏うあからさまな敵意が「寄越せ」と言う 滑りやすい股関でうろチョロしている奴には永遠に分からんのだよ この「寄越せ」が何なのか 老いていく…

「出会えたはずの別れ」  

さあ飛んでいけ、もう戻ることのない時間と共に 輝いた未来だけを見つめて、その夢で出来た翼に太陽を背負い、 どこまでもどこまでも飛んでいけ そうだ、だから、飛び立つ前の迷いの中に見ていたんだ 多くの気持ちを生んだ出会いや別れを、 記念日や些細な帰…

「始祖」  

生まれる前の暗闇からゆっくりと姿を現し、 何物にも属していないその視線に震えて息を止めていた優しい仮面は、 いつしか心さえも覆ってしまった、 そうして欲望の重力が強くなればなるほど、 そこに生き甲斐を見出だして高く飛び、 誰もが憧れる真っ白な夢…

光の闇に潜むもの

空を眺め 目に涙をため 仰ぎ見て固く目を閉じ 暴れ出る悲しみが頬を伝う 自分でも知らなかった思いが、膨らんでもやり場がなく、 涙の葉となって気持ちの大地に帰っていく ああ、散りゆく葉を憂い、堆く積もった葉を愛でる 愛だとかそんな綺麗なものを信じる…

月が今夜も付いてくる

幾つものさざ波にの中に満月が入り込んでいる幻想的な海辺で、 時を止めてただあなたのことだけを考える 優しげな海風が吹き抜け、 上着があれば体は寒くないが、 心に塞ぐことのない隙間がある 気持ちがあなたのことで憂いすぎて あなたを感じることでしか…

ハート型の十字架

愁いというしかないくらい、西向きの窓から入って来る 焦がれた秋色の光に心なしか溶けてしまいたい 落ちてはまた舞い上がるような浮遊感と、 胸の鍵穴から漏れている光景が重なり、 一回、また一回と瞬きの回数が永遠の時間に似て長くなる ああ、あれがまだ…

「あなたが私に見る夢は」

あなたが私に見る夢は、誠実で優しく少し頼りないが あなたを一途に慕う人間であろう しかし本当の私は狼だ 馬さえも追い込む脚力で、出会いを恥じらうあなたの元に駆けて行きたい この頑丈な獣の顎で、美しいあなたの横っ腹に噛みつき 自分のものとして夜の…

愛おしい人

あなたは美しくない ただ、 あなたがいてくれると生活に張りが出て 目に映るものは瑞々しく、心が軽くなる あなたは賢くない ただ、 あなたが微笑んでくれるたけでも希望が湧き、 頷いてくれるだけでも憂鬱が嘘のように消えていく 振る舞いが雑でもいい、 微…

大きな木の下で

夏が過ぎ、 吹き抜ける風が少しだけ冷たくなった夕暮れ時の刹那に、 遠い記憶の隅にある焚き火の匂いが薫ると、 あなたと私の亡霊を見る 仲良く手を繋ぎ、 あの日のついに言えなかった愛の言葉で結ばれて、 荒ぶるほど睦まじいその光景に心底腹から揺さぶら…

遠い約束

秋空にくっきりと別離しているあなたという輪郭が、 一人で歩き始めている 長い道の上で小さくなって遠ざかるあなたの背中が、 もうお別れを告げているのが分かる この何度も一緒に歩いた道で、 あなたと出会ってからの年月で ついに名前を知ることの無かっ…

残像

長い長い一瞬の輝きが、瞳を閉じた後も語りかけている 暑い夏に潤いを与えてくれ、 冷たい冬に広がるような温もりを教えてくれた記憶の源は、 いつの間にか失っていく過去の大河に流れていった 悲しいのは失ったことではなく、 在りはしないものを探し続けて…

幻影と踊る夜

車窓から手を振っているのは、 別れの雨がそう見えるだけで、 誰もそこには何もいないし、 向こうからも私のことは幻にしか見えない 遠くからの別れの言葉がやり直したい叫びに聞こえるのは、 土砂降りの雨がそう聞こえるだけで、 私のやり直したい言葉も流…

もう何も見えなくなる

毎日同じ顔で近付いて来ていた日常が急激に姿を変えてしまい、 その劇的な互いの引力に逆らえない時の流れに、 傍にいて欲しいと困ったように呟いた、 あなたはもう、私以外を見ようとしなかった あなたがそこにいることが何だか暖かい気持ちの源泉のように…

全て嘘ならいいのに

泣かないで恋人よ、 夜空に散らばった真珠が震える夜には、ただ訳もなく体を重ねていよう この肌から直に伝え会う温もりで確かめている存在が、 いつの日か思い出に代わり、 劣情を鍵にしてこじ開ける映像になったなら、 それはもう嘘でも良いのかもしれない…

流れていく毎日に止まったままの心

このまま未来の果てまで埋めそうな憂鬱の曇り空の渋滞に捕まり、 初めて立ち止まった人生が、 自分の立っている世界の回りで溢れているものを眺めている 恐らくはとるに足らない仕事に向かうであろう老人、 子どもの手を引いて道路を渡る母親、 回りにいる人…

覚醒する二つの炎

その夫婦は覚醒や解脱、悟りといったことに熱心で 二人の会話はいつもそっち系統だったし 互いに切磋琢磨して、その域に辿り着けるように 毎日を過ごしていた。 ある時、夫は仕事が上手くいかなくなり 何とも浅はかだが、自分が悟りを開いたら この窮地を脱…

外星雲からサヨウナラを届けに

生き残りをかけた太古から 精神の量だけしかない未来永劫に向けて 初めて交わす握手のような出会いと 縁を断ち切る未練のない別れが 正確にリピートされている 生命が放出されるように聞こえていた、その激動の反復音は ついに支配者たちの曼荼羅にある虹ま…

遠くない明日の覚悟

ついに全ての労働している従業員の代わりをロボットが行う 記念すべき日がやって来た。 そして、一斉に、管理職以外は全てロボットに置き換えられた。 全ての会社の従業員がロボットとなったので、元々いた人間の従業員は どこにも再就職先が無かった。 これ…

燃える雪

いつかそこに行きたいと思っていた。 暗くて冷たく心地よい雲の中で 小さな雪は何も持たずに思っていた その大らかな抱擁を受け取りたいと そこに着いた時の歓喜の雨に打たれたいと 出来ることなら、この冬最初に 一番乗りでそこに駆け下りて 出会ったことの…

春の心臓

変わり行く季節に春が少し目覚め 微かな鼓動が草花たちを起こす 冬に息絶えた妖精がまた息を吹き返して 新しい命の計画を始めている 川にも木陰にも命の囁きが溢れ 待っていたもの達の心の躍動が空にも届き 鳥たちの喜びの声と共に騒がしい歌声となる 大地の…

月光鳥

月がきれいで静かな夜に、心を病むほど倦み悩み、 抗い疲れた者の寝床にやって来て、 染み入るような歌声で苦悩を癒して去って行く 月からやって来ると言われているその鳥は、 その地で月光鳥と呼ばれていた ある時、美しい妻と可愛い娘に囲まれ、裕福で不自…