最後のサヨナラ

冬の間に何日かだけある、

晴れ渡って雲のない空を見ながら、

心を解放してやれる緩やかな散歩に、

冷たい風が運んでくるのは

ノスタルジックで甘苦い邂逅だろう

 

そうだよベイビー、あんたと交わした

「最後のサヨナラは俺がする」って約束を、

今、思い出している

 

あんたはいつだって俺が一番で、自分のことより俺を優先した。

 

初めて会った時に惚れたのも、

何度も誘ってアプローチをかけたのも、

プロポーズしたのも全部俺だ。

 

なのに、いなくなるのはあんたからだなんて、

今日の空みたいに悲しい

 

俺の愛情をごっそり置いて、弱くて優しい笑顔でいなくなった、

 

俺が最後のサヨナラの約束を守れなかったあの日の空を、

俺は今でも覚えている、

 

悲しみで透き通ったあの青空を忘れることなんてない

 

ベイビー、あんたに出会う前、

飯を食べようとして箸が一本しかなかった時に、

俺は馬鹿馬鹿しくて笑ったんだ

 

でもあれから、一本しかない箸を見ると悲しくてやりきれない

 

そうだよ、馬鹿馬鹿しいだろ?

 

青空に恋人と箸だなんて、卑しい妄想が過ぎて、

きっと笑ってくれただろうな

 

あぁ、そうか、さっきあんたを空に思い出したとき、

俺は最後のサヨナラをしたんだな