立ち止まった足音

人生という、長いこの生活道路をあんたと走っていたんだ

 

俺は対向車線の向こう側に曲がろうとして、

あんたを含めた後続車両をどん詰まらせた渋滞を作って、

車が途切れたタイミングでやっと曲がったら、

あんたはそのまま真っ直ぐ走っていった

 

鮮やか過ぎる衝撃に、思考停止から戻った時には、

あんたはもうずっと遠くに見えなくなっていた

 

そりゃないぜベイビー

ずっと一緒にやってきたのに、何が不満だったんだい?

俺が前にいる風景に、飽きちまったのかい?

後ろから見る景色に、自分が居ないことに気付いちまったのかい?

 

立ち止まっていた足音を、

愛する者の存在証明と嬉々として聞いていたのは俺だけで、

その足音には日々の苛立ちや、生活の不満が混じっていたんだな

 

俺はちゃんと後ろの足音を聞くべきだったんだ、

そしてその手を取って「寒くない?」とか、

優しい言葉で包むべきだったんだ

 

右折してそれっきり、サヨナラさえもない別れが、

互いを全く分かっていない俺たちには、

お似合いなのかもしれない

 

もう、あんたはずっと先に行っちまったけど

「一人で寂しい思いをしていないか?」なんて、

今さら優しくしている下手な人生運転に、

我ながらあきれるよ