全て嘘ならいいのに

 

泣かないで恋人よ、

夜空に散らばった真珠が震える夜には、ただ訳もなく体を重ねていよう

 

この肌から直に伝え会う温もりで確かめている存在が、

いつの日か思い出に代わり、

劣情を鍵にしてこじ開ける映像になったなら、

それはもう嘘でも良いのかもしれない

 

全てが嘘であったなら、恋人よ、

あなたを眠れないほど慕っていた私という愚かな迷い人もいないのだ

 

毎日、毎晩、あなたと時間の流れを共にして、

その手に触れた感動で何編もの恋の詩を綴り、

心にも運命にも二人の物語を認め続けた誠実な青年はいなかったのだ

 

全てが嘘であったなら、恋人よ、

あなたの決心した美しい顔を二度と見ることが出来ないと、

絶望しながら朗らかに決別した日も、この世界には来なかったのだ

 

だから泣かないで恋人よ、

全てが嘘であったなら何も無かったことに出来るから、

今だけは互いの瞳の中に映る自分を見て、

強烈な感情に身を委ねよう