「旅立ちの花」

その花は旅立った人を見送る決意が出来た時に、美しい花を咲かせるという

 

父が旅立って一か月後にその花が咲いた

家族で団欒を過ごしながら、我が子の食事を見守る目に、
厳しいが頼りがいがある父の思いが重なった時、
父の面影を持った大きくて真っ直ぐな美しい花が咲いた

 

母が旅立って一年後にその花が咲いた

夏祭りの後、我が子を背負って帰る道すがら、
優しかった母の温もりが夜風を遮って重なった時、
母に似た小さくて可愛らしい花がそこら一面に咲いた

 

恋人よ、あなたが旅立ってから、もうどれだけの時が経っただろう

あれからずっとあなたに手紙を綴り、祝福を受けた炎で手紙を燃やして、
あなたの元へと送っているが、あなたからの返事はない

 

夢であなたに呼ばれた気がして、朦朧として何が現実か分からないまま起きては、
夢の中くらい願いが叶えば良いのにと途方に暮れもする

 

私はあなたを今でも慕っているし、この先も変わることはない

新しい出発を望む者もいれば、待つことを望む者もいるだろう

 

彼は恋人に手紙を書き続けた、その数は彼を悲しませもしたし慰めもした

彼の心は恋人に囚われてもいたし、恋人への気持ちは変わらず自由でもあった

 

長い間、彼は恋人を待ち続けたが、彼にも旅立ちの時がやって来た

愛する家族に見守られ彼が安らかに旅立った時、美しい花が咲いた