「迷子のジャスミン」

花を咲かせて実を結び、我々、種族の後継をこの世界に送り出した

この次はいったい何をするのだろう?

来年も花を咲かせて実を結び一連の流れを作業のように繰り返すのか?

もう十分に使命は果たしたのに

 

なぜ私はあの鳥のように、大空を飛び回れないのだ?

あの鳥は私の種をつつき糧にして飛んだのに、なぜ私は飛べないのだ

 

なぜ私はあの獣のように、自由に野山を駆け回れないのだ?

あの獣は私を踏み付けて駆け回るのに、なぜ私は走れないのだ

 

なぜ私はこの崖の上で、飛ぶことも走ることもなく、
同じ風景を見て同じ毎日を過ごさなければならないんだ

 

旅人なら誰もが足を止めて観望する、
雄大な崖の上にいる絵になるジャスミンは、自らの境遇に悩んでいた、
足があれば崖から飛んだだろうし、羽があっても崖から飛んだだろう

 

どこにも行けない迷子のジャスミンが風に揺れている