「彼方で朽ちた暑い夏」

 

ロードショーを見ていたんだ、

お互い別々の道を選んだけどハッピーエンドの

 

桜並木の霞んだ花びらのカーテンの中でも君は輝いていた、

君に声をかける頃にはもう思いが膨らんで伝えたい気持ちは育ちすぎていた

その笑顔の意味が分からずに正に天まで昇る気分だった

 

今なら分かるよ、君はただ困ったんだって

見知らぬ者からぶつけられる好意に、ただ困ったんだって分かるよ

 

君と言う素晴らしい外見と中身が伴った稀有な人物とふれあい、

人の気持ちや雰囲気を読むことの大切さを感じて、

人として成長したから、「好きでも諦める」「好きだからこそ諦める」

ということがよく分かるんだ

 

でも、自分にとって何の得があったんだろう?

人として成長して回りのことを考えるようになって何の得があったんだろう?

 

君に、この心に持ち続けて手垢で真っ黒になった本当の気持ちを、

そっくりそのまま伝えたら良かったのに

お利口さんな笑顔の下の、歪んだ正体が本当に自分のためなのか?

大切に大切にした、君への気持ちを君に伝えないことが何になるんだろう?

 

心を強くする度に、君との距離は近くなり、心は遠くに行ってしまう

そんなことを繰り返して、君に大切な人が現れ、強い心で祝福した

 

その人みたいにちゃんと気持ちを真っ直ぐ伝えたら良かったんだと、

今でも思う

そうしたら君との思い出が詰まった暑い夏を過ごし、

君に心も体も預けられたのに

 

頭ばっかり大きくなって、気持ちを大切にしなかったから、

君との暑い夏は遠い彼方にあったまま、いつしか朽ちたんだろう

 

そうだ、きっとロードショーを見ていたんだ、

お互い別々の道を選んだけどハッピーエンドの