車窓から手を振っているのは、
別れの雨がそう見えるだけで、
誰もそこには何もいないし、
向こうからも私のことは幻にしか見えない
遠くからの別れの言葉がやり直したい叫びに聞こえるのは、
土砂降りの雨がそう聞こえるだけで、
私のやり直したい言葉も流されてどこにも届かない
遠ざかっていくライトだけは、
愛する心と繋ぎ止めたい体の距離を残酷に物語っていて、
触ってもいないし五感で確かめてもいないけど、
間違いない気がする
誰かがいつか、この雨の中で出会いや別れを叫ぶなら、
そんなにも不確実な世界の端に立ち尽くしている案山子のような思い出が、
他者の実りを祝福できるように、
繰り返し訪れる崩れていく夜に紛れて今夜も幻影と踊るのだ