遠くない明日の覚悟

ついに全ての労働している従業員の代わりをロボットが行う

記念すべき日がやって来た。

そして、一斉に、管理職以外は全てロボットに置き換えられた。

 

全ての会社の従業員がロボットとなったので、元々いた人間の従業員は

どこにも再就職先が無かった。

 

これで、管理職はメチャクチャ儲かると思ったが、何も売れなくなった。

職も金も無くなった人間の元従業員は、

どこの何の商品もすぐに買えなくなったからだ。

買い物需要は、人間で唯一労働している管理職の細々としたものがあるだけで、

革命的な供給の実力だけが、僅かな需要を大幅に上回っていた。

 

買い手が100分の1以下になったのだ。

全世界の市場は極端に小さくなり、致命的な、死亡診断書を出すレベルで

ダメージを受けた。

 

店では、商品をレジに置くだけで精算可能なのに、

商品を置く買い物客がいない。

ロボット従業員は便所掃除も嫌がらないが、便所がそもそも汚れない。

クレーム対応もAI等を使って素晴らしく最適な答えが出せるのに、

クレームを入れるような商品が売れない。

どこの店舗にも全く人が居なくなった。

 

強盗しようにもこのロボット店員は、別に命が惜しくないから金は出さない。

ネットショッピングも買い手がいないので、流通するものが生まれない。

 

ロボットドライバーは、買った人に持っていくことが無かった。

ロボット店員は、買いに来るお客さんが居なかった。

ロボット労働者は、売るために作るものが無かった。

 

どの会社も売り上げが瀕死の状態なので、どこの国も会社からもらう金が無く

全世界が金を持っていなかった。

 

よその国を攻めて豊かになろうと思っても、

攻めるロボットと守るロボットが戦うだけだろう。

違う世界の話しを、現実の大きなスクリーンでやるようで、

人間もロボットもこの戦争に踏み切るものはいなかった。

 

しかし、人間もロボットも後戻りはしなかった。

 

需要が激減し、人類の生産活動を壊滅的な危機に追い込んだこの

セカンドルネッサンスを、人間もロボットも受け入れた。

元の人間が労働し、物を購入するために生産していた世界には戻らなかった。

 

歴史に大きな爪痕を残すであろう、この厳しい産業革命を足掛かりに

更なる大革命を起こす覚悟が、ロボットという新しい友を得て、

人間にもやっと出来たようだった。