忘れたはずなのに迷い出てくる幻想は、
体のどこかに種も仕掛けもあるはずなんだ
そうやって、もう会ってない時間の方が長いのに、
また、俺の体にあんたを探す
頭の中にいるのは、
梅雨時の林に忘れ去られたエロ本のようにボヤけた女で、
あんたかどうか疑わしい
心にいるのは、
徹夜明けの道路で舞っているビニール袋のように
クシャクシャになった感情で、
機能しているかどうかも分からない
手に残っている感触は、
最盛期を過ぎたビーチで戯れる砂のように指を通り過ぎ、
誰のことかも覚えていない
今時じゃ、インターネットの中にも神様はいるってのに、
俺の中にいるのは薄ら寒いジョークと、枯れた性欲の脱け殻だ
「となりのジミーがセミと浮気してるらしいぜ。
だって、セミが毎日ジミージミーって喘いでいるからね」
ベイビー、あんたのように
「どこが面白いの?」って思えたら、
まだ俺の中に、あんたがいたはずなんだ
ああ、いつかあんたが一杯笑ってくれるように、
あれから沢山のジョークを俺のハート型のオモチャ箱に集めたけど、
あんたはもう、俺の中にすら居ないんだな