俺が清教徒のように大切に使っているボールペンで書いたダイアリーが、
思い出に煙るこんな日は、あんたがよく現れる。
あれから随分と季節が巡り、外見がすっかり変わっちまった俺に、
あの日のままのフェニックスがいつものように軽口を叩いて来る。
あんたのカマロと俺のシボレーがそれぞれ2号線と9号線にサヨナラする時に、
シボレーのクラクションは「またな」って言ったけど、
カマロのエンジンは「2号線と9号線は地球の裏までは続いてないのよベイビー」
って悲しく微笑んだ。
二人が飛び出して行ってそれっきり、シャネルNo.5より鮮やかで綺麗な別れだった。
まぶたのアルバムの中から飛び出して、
あの日のまんまで色々なことを羽ばたくように懐かしい声で甦らせる。
どう見てもあんたなのに、どう考えたってあんたじゃない。
全く厄介で美しいフェニックスだ。
だけど嫌いになれないんだよ。
何度あんたが死んだって、何回でも生き返って欲しい。
あんたもそっちでフェニックスを見ているかい?
俺は、生まれ変わりも不死鳥も信じないけど、
あんたのことは今でも信じてるよ。