「雪を見るためだけに生まれた獣」

情念、柔肌、掘りごたつ、その手にしたものは何だった?

 

捨てたはずの情念の先端に、厳しい冷気が生への執着を運んでくる

その手際の良さには美しさすら覚える

 

しっとりとした雪のような柔肌に、その皮下に、

熱を孕んだ柔肌に付けられた獣の足跡を見た真夜中にうなされている獣よ

お前の傷もろとも撫でようとする優しい雪を、思いの連鎖で広げた両の手に信じて恐れることなく抱くことができたなら、獣の罪は許されたかもしれない

 

沸々と煮凍える牙を讃えた相貌は朱に染まり、深々と額に積もっていた雪は散開し、凍りついた胸中も雫となって流れ落ちただろう

 

あぁ、そうだ、この世界に比類するもの無き気高い獣よ、気品などかなぐり捨てて俗世間にすり寄れば、始まりの春も叶ったのに、白い雪の中の黒い闇を見ることも無かったのに

 

真っ白な世界からの憧れを一身に背負い、今なおその戦いの傷口を包み込んで撫でようとする雪を、見るためだけに生まれた獣よ、

誇りを食らって空を噛み愛する天へと吠え続けろ、強さだけで支えているその信念の炎が、全ての世界を溶かすまで