とらえられない視界の外で、
気持ちのコーナーにあなたを追っている細いカゲロウが揺らめいている
二人が離れてしまわないように、一緒に冬が越せるように両手に描いた赤い鎖
あんなに嫌がっていたのににじんでしまった
あなたのために沸かした濃いめのコーヒー、飲んでくれたら不安も冷めるのに
そこに居るのに気配が薄くて、凍った窓からの優しい景色に吸い込まれそう
まぶしい光りにその背中が溶けて何も出来ずに震えてしまう
慌てて近付いたあなたからは神様にそっくりな匂いがして
そこからはもう、手で触ってそこに居ることを確かめる
二人がゆっくりと老いていくことが、もう本当に嘘になって
秋を切り取ったような柔らかい木漏れ日の中で支え合う暮らしが
本当に嘘になる
テーブルの向かいに座ってあなたを見つめる朝に、少し寒くなってきた朝に
その椅子を見たらダメになって、
視線がテーブルクロスの好きだったステッチをさ迷う
あなたの心にかけたレースの十字架、
私の写真をたくさん入れたレースの十字架
眠っているその胸からはもう見つからない
愛情が明日に向かうように声を掛けようとしたら落ちてしまった大粒の涙の中に、
安らかに眠っているあなたを閉じ込めたのが、
どうか嘘であって欲しい