人間の塊

 

どこにでもある潰れそうな酒場の、薄汚れたネオンの光が僅かに届くその隅の方に、

人間の妬みや嫉みの垢の塊が潜んでいる

塊は長年、人を骨まで食らって来た癖に、

光に当たればあっさりと消え失せるから、そこでしか生きられない

 

他人の言葉でしか喜怒哀楽を知らない、

憐れな塊が恨めしそうに明るい方を夢見ている

いや、あれは決して明るくはない

闇と光の中間を見つめている

 

その中間地帯で、きっかけさえあれば薄暗い暗闇に落ちる、

半端者を見つめている

 

奴らの酒は、

この夜を酒浸しにするほど飲んでも、

過ぎ去った恥や後悔が酒の勢いで甦り、全く酔えないのだ

 

慰めの氷をぶち込んだ一杯を一気に煽っても、

体だけが熱くなり頭は冴えて生ぬるく、

生地のままで喉にアルコールに浴びせても、

大嫌いな世界が傾くだけで、腐っていく状況はまるで変わらない

 

塊が奴らを好むのか?

奴らを塊が呼び寄せるのか?

 

どちらにしろ、出会うべくして出会い、

やっと一つになれた愛人のように、何度も別れてはまた、

くっついて狂気を始めるのだ

 

自身の深淵さえ知らずにおどけてみせる道化のように、

夜ごと酒を飲み干して、吐き出したい過去は吐き出せずに、

帰路の道端で死んだように倒れて眠る

 

夜明けになれば共に飲んだはずの愛人も失くし、

自分の正体も失くし、未来も失くして、涙を笑うのだ