俺が小さい頃からの無邪気な尊敬を、
そして大きくなるにつれて自らの経験からくる畏怖を、
カードダスのように簡単に集める近所の兄ちゃんがいる。
もう俺がイイ年だから、兄ちゃんはもっとイイ年な訳だけど、
ハゲ、デブ、ワープアのロイヤル、ストレート、フラッシュと
年季も気合いも入っている
その風貌は、
可愛げのない値段のツボを売り付ける
消費者詐欺の可愛い姉ちゃんからは、
コケティッシュな獲物に映るらしく、
駅前という狩場ではしょっちゅうハンティングされる
兄ちゃんはそれを「逆ナン」って言い張るけど、
ご利益の無いツボについて説明する姉ちゃんの目をしっかり見据えて、
同じように説明を繰り返しながら悦に入って震え、
その何でも快感に変えようとする、
貪欲なヒトガタのモンスターからは、
これはやはり「狩り」なのだと、強く認識させられる。
憐れなのは狩ったと思って狩られていたツボ女だ、、
ちょっと外見が良くて自分が優位に立っていると思っている奴は、
自分に迫っている深淵の魔物に気が付かない
俺ならファーストインプレッションで、
禍々しい視線をバストから微動だにさせないオッサンは、
何の罪に問えるか分からないが即通報だ
確かに喫茶店代までツボ女に払わせるんだから、
「逆ナン」かもしれないが、
二度と同じツボ女を駅前で見かけることはなかったのだから、
これはやはり狩りという戦いなんだ
ああ、なぜ深淵を覗いたのか、
お前の欲望を満たすために、
お前自身を餌にして、深い深い闇を覗いたのか
結局、お前はその目で見た闇を二度と見たくはないようだが、
この世界には夜や日陰といった暗がりがそこかしこにあり、
それにすら怯えるお前の目には、しっかりあの闇が息づいている
ああ、なぜ深淵を覗いてしまったのか