「海底に沈む海」

お前の海は死んだ、と神様が言う

あぁそうですか、では愛想が無いし、

ええ!何ですって!なんて嘘臭過ぎる

もう死んでしまったならどうしようも無いし、

神様が言うならそうなんだろう

そうなると、ここは無言が一番良い

 

お前の海は死んだのだ!とまた神様が言う

(二回目は、のだ!が付いたのだ)

ここで、あぁそうですか、では全く愛想が無いし

ええ!本当ですか!では神様を信じていないことになる、

信心深い僕には許されないことだ

やっぱりここは無言の一手だ

 

お前の海は沈んだのだぞ!と神様がまくしたてる

あれ?死んだのでは? なんて失礼なことは言えないし

どっちにしろ参ったなぁ、なんて感想文は述べられない

 

砂嵐になった画面から聞こえる神様の声に、

一人どうしようか悩んでいる夜明け前は、
もう始まっている社会の動きが肘に当たるくらいすぐ側にあるのに、
僕とはまるで繋がりがなく暗い海底から仰いでみているようだ

 

遠い国の戦争や偉い人のゴシップはみんなが話題にして、
愛や夢なんかはドラマでもアニメでも演じて熱狂し

みんなが分かろうともするのに、

神様と話しが出来る僕のことは誰も見てくれない

僕が画面を見ても砂嵐しか映らない

時たま画面がブラックアウトして

世の中を恨んでいそうな汚い男が映りこむが、
こいつも誰からも相手にされそうにないし、

僕もあんな醜いやつは相手にしたくない

 

僕が優れていて何でも出来る能力があることを誰も理解できないことは

もうとっくに分かっている