いつしか失くした最愛の人を、胸の傷痕が覚えている、
深く雑な傷口は放ったままに時の流れに任せ、
覆うように閉めた心の蓋のせいで蒸れてしまい、
見るたびジュクジュクと腐敗が進み、
鼻をもぎ取るほどの異臭に
この世に生きたことまで戻しそうになる
嗅いでは嗚咽し似ても似つかない燦々とした日々を思い出し、
臭いに負けて涙しているのだと言い聞かせながら腐臭を嗅ぐ
この傷痕を新鮮な恋人に打ち明けてその輝いた瞳に照らされたら、
すぐにでもこの想いは霧散し、
心の傷痕など元々無かったように完治するだろう
そうだ、これは残酷な祈りであり美麗な呪いなのだ
最愛の者を傷痕に変えてこの胸に閉じ込め、
誰の目にも触れさせず己だけの偶像とする決心なのだ
気が触れていようと、世界を敵に回そうと、これは恋愛を超える純愛だ
胸の蒸れた蓋から滴る血が物語っている
自ら広げた傷痕に倒れ、純愛の血海に溺れても、
押し貫くだけの覚悟がある
愛の女神が取り戻そうとしても、死が引き離そうとしても、
私はお前を離さない