爛れた心

後悔の靴を脱ぎ捨てた過去が、

忘却の浜辺で畏怖や敬虔など持ち合わせない

艶かしいものたちと遊んで充たされている

 

初恋の麗しさを歌うように周囲に語り、

あなたの影さえ踏まないように慕いながらも、

叶わぬ距離に諦めを呼び込んで、

この長く続くはずの物語をそっと閉じた

 

そしてあなたを忘れないと誠実に囁いた口で、

手短な誰かと愛をねぶるのだ

 

あの日のあなたには届くことのない、

謝罪や慰めの言葉を連ねて、

あなたの中でも生きると誓い、

過去の全てに知れ渡った恋人への感情のまま、

また別人の顔をして享楽に浸る

 

ああ、この抑えきれない渇望に名前があるなら教えて欲しいのに、

あの日のあなたはそこいらに溢れている安い恋人の顔になり、

私の耳に聞こえの良い愛の言葉しか教えてはくれない

 

汚い鳥の鳴き声や、他人を責める暴言の方がまだましかもしれない

それほど用心を失くす甘言しか教えてくれない恋人の顔に、

いつまでもあなたを想い描こうとする爛れた心が、

治ろうとしてあなたを求めて、

また爛れては悲しく呻く