無限坂

ともに自転車を押して歩く背中を

今でも覚えている

 

初夏の帰り道に朗らかな笑顔と

汗ばんだブラウスから弾けた香りが

鼻から胸にガソリンをまき

著しく情熱が燃え広がった

 

話をしながら、その声に溺れ

瞳を見ながら、その唇に飲まれ

果てのない無限の坂にとらわれて

どこまでも転がり落ちていく

 

その背中に大切な人が透けても

心が道徳の壁に立ち止まっても

禁断の白昼夢の続きにある

妄想の果樹園で黄金の青リンゴが

たわわに実る

 

早く早くと言われたかった

もっともっとと急かされたかった

あの染みだした気持ちが溜まった

水溜まりの牢獄に囚われたのは

一途な想いだけではなく

強く強く欲する愛でもあった

 

いつか一つになれるような未来も描かず

いったい何を願っていたのか?

 

青春という一言でかたずけるには

あまりに簡単過ぎて

あまりにもその通りだった