サーロインバニラ

真夜中の廊下から寝室に入り、

ドアを閉じるまでの一瞬が、

永遠から一秒に変わる時

 

そのサーロインバニラ色の鳩尾に、

埋もれて眠るのが俺であったなら、

1日くらい社会に奉仕してもいい

 

美しい寝姿に見とれて、

その静かな寝息に合わせ、落ち着こうとするが、

沸き上がってくるイタズラなままの十代心が、

体を寄せさせ、その心にまで密着したいと、

熱をはらんだ手が、勝手に温もりを探している

 

んんっ、というちゃんと人を噛む番犬が持つ威嚇を含んだ短い声に、

明るくなりかけた手が行方を無くしてしまう

 

俺とあんたの、目盛りの合ってない胸の定規で、

真っ直ぐな線を「愛してる」の方に引いても、

到着するとこが手を繋ぐとメイクLOVEくらいズレてるし、

そもそもスタートが合ってない

 

こんな関係になってまで、

まだ少年少女のような夢を、

愛し合った後のベッドで見るし、

男と女の駆け引きを心の中に持ち込もうとする

 

ああ、名前の無い関係に戻れたら、

この悲しみを愛なんて呼ばなくていいのに