ファーストキスはレモンの味

近所の綺麗なお姉さんから耳元で教えてもらう

「ファーストキスはレモンの味がするんだよ」

に勝てる上級魔法は、そんなにない

 

今でも思い出すだけで俺の頼りないライフは全快する

 

むっちゃ気になっている子からの

「今日、家に誰も居ないんだー」や

「絶対に何もしないなら、家に来てもいいよ」

という上級魔法も強力だが、

キスに乗っけ盛りしたファーストが、

威力をユニバーサルにしている

 

夏祭りで、傍にあるのに永遠に遠くて近い、

その手を繋ぎたいもどかしさや、

クリスマスパーティーの帰り道に、

個人的に用意したプレゼントを渡すタイミングは

待っていては来ないんだという、気持ちの延長線上に、

触れたら弾けて、

その後で猛烈な感情の盛り上がりと決壊が同時に発生する、

ファーストキスというリアルが充実する一大イベントがある

 

そのインパクトは魔法のように鮮烈で、

人間の記憶というドキュメンタリーで語っても

2000年以上掛かる代物だ

 

だから、覚えられない空前絶後

「レモン」という甘酸っぱさを適量入れて、

心の曖昧さを補完していく

 

大好きだったけど実らず終わった恋なら、

甘酸っぱい「レモン」の味だし、

 

今でも一緒にいて思い出すなら、

ほろ苦い「レモン」の味だろう

 

そんなことを思い出しながら飲んだサイダーは、

喉に青春を流し込み、爽やかな心の痛みを思い出させてくれた

 

そして良く考えたら俺のサイダーが減ってなくて、

一緒にサイダーを飲んでいた

ハゲ、デブ、キモオタのマイフレンドが赤面しているところを見ると、

充実したはずの俺のライフは、

思い出さなくても限りなくゼロに近い