揺れない心

曇り空の下で、何一つ秀でた物も持たない者が、

己の場所から遥か遠くに、輝いた光の降り注ぐ場所がある

 

光に恵まれない者から光の恩恵を受ける場所が見えるなんて滑稽過ぎるが、

ただ受けいれるしか出来ることはなかった

 

だから、雪の降る冷たい朝に起きて、

暖かい故郷を離れて旅に出た

険しい道の上で倒れては立ち上がり、

涙で夜を濡らしながらも、

心を奮い立たせて進んできた

 

そしてようやくたどり着いたこの場所は、

もう光に愛されてはいないなかった、

全てを賭けて捧げて来たが、

見返りなど土塊も無かった

 

呆然とした瞳で、最初にいた場所を振り返れば、

そこはあの日見た憧憬のように光が降り注いでいて、

身体中の血が凍るような絶望が雪崩れてくる

 

何を夢見てここに来た?

故郷を捨ててまで欲しかった物は何なのだ?

そうして手にした物は何なのだ?

 

自分の声で心を苛む風が吹き荒れるが、

まだ終わってはいない、

絶対にこの旅をこのままでは終わらせられない

 

あの場所を離れてから培った縁や、

感謝を生み出す荷物を背負っている

 

いくら重荷になろうと、

この荷物の温もりが私の毎日に体温を与えてくれ、

太陽を真っ直ぐに見つめる姿勢をくれるのだ

 

そうだ、また、あの場所を目指してたどり着いても、

今度は私が居たこの場所が輝くのだろう

 

それでもいい

もう勝ちでも負けでもなく、

生きて逃げて抗い、続けることを選んだのだから