あなたの口が開いた音で全てが分かった
出会いの歌や恋の歌ばかりを流していた、
あの騒がしかったラジオから、
厳かで始まりか終わりを告げるクラシックが流れている
全て放棄してうなだれるような雲が空を覆い、
心なしか近くてチリチリ言うノイズがあなたの声に聞こえて、
もう暗く冷たく萎んでいく世界の中で落ち着きを取り戻している
頭をもたれている木の葉の間から見えている光から、
どうしようもなく欲しかったその笑顔が透けて見えて、
お迎えなのか、サヨナラなのか、
遠ざかりながらも強く意識しては痛みが薄らいでゆく
足の裏に心地好い砂浜と、頬を撫でる優しい風が体温を奪う、
ああ、もうすぐこの流れと共に私はこの世界からいなくなるのだ
あなたがいなくなってから私のほとんどはこの世界から消え失せ、
私がこの世界にいることであなたはまだこの世界に留まっていた
だがもうすぐ、私もいなくなってしまうだろう、
すぐ近くにあなたがいるのを感じる
あなたも私を感じ、
同じ気持ちでいたのだろう
あなたの口が開いた音で全てが分かった