うちに住んでいる親父と俺と犬のバンチョーという、この最強のオスたちの中で、
俺など何一つオヤジとバンチョーに勝つことはないと思っていた運命が、
今、変わろうとしている
我が家で一番最初に飯にありつくのはバンチョーだ、ママのお気に入りなんだから
どんなワガママも通るのはバンチョーだ、ママのご機嫌はあいつ次第なんだから
金だけは親父がちょっと持ってる、バンチョーは金を使えないからだ
だからといって勘違いしないで欲しいが、バンチョーは最高にいい奴だ
俺が家に帰ると、ママと俺とを何回も往復して、全身から喜びを撒き散らす
はしゃぎ過ぎて、ママに吠える頃には、どっちが誰か分からなくなるほどだ
真夜中でも、一人になりたい時でもそれだから、無理にでも心が明るくなる
オヤジはいつも「それで最近どうなんだ?」と聞いてくるが、
今日あったことや友達グループ以外興味の無いニュースまで話した後に
それを聞かれても、新手のジョークにしか思えないが、
オヤジはそういう人なんだ
出世とか金とか色んな物を欲しがる人じゃないけど、
俺とのコミュニケーションはどれだけあっても足りないらしい
ああ、俺はこの二匹に勝つことは出来ないんだなって、
分かってたことけど、やっと降参するよ
だから、そろそろ一人で歩き出そうと思うんだ
俺もオヤジとバンチョーのように、そいつが帰って来たら喜んで迎えて、
そいつの話を聞いた後に心配してやれる、最強のオスになろうと思うんだ
バンチョー、オヤジをよろしくな
お前がちゃんと支えてくれよ
オヤジはすぐに泣くんだから
ごめんよオヤジ
この家で最下位になるかもしれないけど、泣かないでおくれよ
たまにはレジェンダリー最下位として顔を出すから、長生きしてくれ