Butterfly 夜の蝶

アルコールを飲む前に

「俺は絶対に酔っ払わないぞ!」って、決めたいんだ。

 

これをやらないから、毎回、何も覚えてないんだと思う。

 

みんなも協力して覚えておいて欲しいのに、

いつも「またか」って顔をされるけど、

俺のその日初めての誓いくらい、応援するべきだろ?

 

でも、そんなゲロみたいな顔されたっていい、

アルコールはいい。とてもいい。

気持ちが明るくなる。

 

俺の汚れて足の置き場の無い便所みたいなハートを、

真っ白に照らしてくれるから、

何を踏んづけたって気にならない。

 

ああ、もう自由の羽が生えたのを感じる、

もっともっとアルコールで、酒樽になった俺を満たして、

今夜一皮剥けようじゃないか!

 

知ってるかいベイビー?

 

蝶はサナギの中で、一回ドロドロになるんだ。

全然、別物になってるんだよ。

 

だから、昨日あんたが繁華街で見た俺も、

ベロベロに酔っ払っていた別人なんだ。

 

横にいた髪の長い生物も、もしかしたら昔から仲のいい、

男友達かもしれない。

 

そいつも夜の蝶になってフラフラしてたのかもしれないし、

俺って優しくて誤解されやすいから、

それを保護してあげていたんだと思う。

多分だけど。

 

だからベイビー、いっぺんドロドロに溶けてまで生まれた蝶々は、

貴重な生き物だから、丁寧に扱った方がいいと思うんだ。

多分だけど。

 

ああ、こうならないように昨日ちゃんと

「酔っ払わないぞ!」って決めたかったのに、

何にも覚えてない。