私は今でも  

 夕暮れ前の帰り道を歩く時、いつもあなたが傍にいて、

くだらない話に付き合ってくれていた

 

それは恐らく、二人の道を迷わないように守護し、

私を導いてくれていたのだろう

 

私は、今でも、

あなたの顔を鮮明に思い出すことが出来る

 

あなたがいつもの得意気な顔で言う、

二人にしか分からないセリフを、

あの日と同じこの部屋の中で、

一人になった私にあなたが言う場面を何度も見ることが出来る

 

私は、今でも、あなたを愛している

 

思い出に捧げているのか、

自分の後悔を埋め合わせているのか分からない、

あなたへの愛の言葉や感謝は尽きることは無い

 

しかし、あなたへの「ありがとう」が「ごめんなさい」と同じくらい

使われていたことを思い出し、

言葉の重さなんて気持ちの天秤にも残らないと知る

 

私は、今でも、あなたがそこにいるかのように声を聞くことが出来る

 

なのに、私の言葉であなたが今どんな顔をしているか見ることが出来ない

あなたと私の間にあるガラスに近づき過ぎて曇ってしまい、

向こう側が良く見えない

 

私は、今でも、あなたに問い掛けている

 

いるはずのない幸せと暮らし、

言えなかった愛の言葉を繰り返しながら、

暴走するガラス張りの車に乗って、

四方が雲って見えないまま、

アクセルもブレーキも踏めないでいる